第9章 祈り /sect.4



 都市帝国から発射されたミサイルはヤマトに次々と着弾した。土方はヤマトを急降下させ、都市帝国の下部構造である外殻下に潜り込ませたが、下部構造部分には艦載機発射口と対空機銃が設置されていた。
 たちまち対空砲火の嵐がヤマトを見舞い、艦載機部隊がコスモタイガーとヤマトに襲いかかる。
 艦内各部が致命的ともいえる規模の損害を受け続け、ヤマトの機能はみるみるうちに低下していった。
 機関部では火災が発生し、徳川が爆弾の破片で重傷を負った。
 斉藤が第一艦橋に駆け込んできて、医務室にも直撃弾が命中し、佐渡が重体となり、アナライザーが壊れたと叫ぶ。
 その直後、艦長室が直撃を受けて大破し、艦長席の真上にあるエレベーターホールから飛散した鉄片が艦長席の土方を襲った。



 雪が土方を抱え起こす。…土方の背中には、まるで包丁を突き刺したように鉄片が刺さっており、致命傷であることは誰の目にも明らかだった。艦長席に駆け寄った第一艦橋スタッフの前で、土方は苦しい息の下から言った。
「生きて汚名をさらしていた私も、やっと……古代、次の艦長は、君だ」
「艦長…」
 古代が言う。土方は続けた。
「あれを見ろ。…敵艦載機の…射出口だ。あの射出口から、都市に侵入しろ。内部の動力源を破壊するほかに、勝つ手段はない。…戦え、古代。地球の運命は君の肩に、君たちの肩にかかっているのだ」
「はいっ。古代進、ヤマト艦長の任につきます!」
「頼むぞ。…古代……」
 そう言うと土方は絶命した。古代は叫んだ。
「土方前艦長の命令を決行する!」
 その時、斉藤が進み出た。
「古代、おれたちも行くぞ」
「敵の懐に飛び込むんだ。生還は期しがたいぞ」
 斉藤は破顔すると古代の背中を思い切り叩いた。
「わかってるよ、新艦長!」
 真田はずっと目を閉じていたが、やがて目を開き、低い声で言った。
「俺も行くぞ」
 古代が驚いて見返す。
「真田さん!」
「俺がいなきゃ、メカのことはどうにもならんぞ」
 真田は静かに微笑んだ。…それはなにもかも覚悟した者だけにできる微笑みだった。
 古代はかつて真田とともに宇宙要塞を爆破に行った時のことを思い出し、胸がつまるのを押し殺して深くうなずいた。

ぴよ
2010年05月23日(日) 15時39分45秒 公開
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■作者からのメッセージ
こんにちは。sect.4をお届けします。

前作のあとがきとか100の質問でもお書きしているのですが,さらばの全滅エンドはどうしても耐え難いけれど,ヤマト2の生き残り方はどうにも自分としてしっくりこない…というのが動機でこの作品を書き始めたという事情がありまして,さらば分岐(?)ではありますが,今回,ユキちゃんに加えて佐渡先生と徳川さんにも助かっていただいております(ケガなんだから,治療すればなんとか治ってくださるでしょう)。

ただ,土方さんのようにあれこれ悩んだけれどやっぱり原作どおりになってしまった方もありますし,今後も同様の方は出ると思われます。前作あとがきに書いた「全員で生還」とは進行が変わってしまいましたため,大変恐縮しておりますが,あとしばらくおつきあいいただけましたら幸いです。

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No.2  Alice  ■2010-06-04 22:11  ID:38AtSMCu9X6
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際限なく降り注ぐミサイルや対空砲火…、ヤマトは火を噴きボロボロになり、次々と傷つくクルーたち、何度見ても、もうやめて!…と叫ばずにはいられない場面です。
真田さんと古代、言葉にしなくても通じ合っている、なんだかんだ言っても、やはりこの二人は盟友なんですね。
No.1  メカニック  ■2010-05-24 01:16  ID:LMMpoHtVW8U
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真田さんの静かな覚悟…。私には止めることもまたその資格もありません。ただ、祈るだけ。真田さん、みんな無事にかえってきて!っと。
総レス数 2

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