第9章 祈り /sect.6 |
真田と古代を載せたコスモタイガーは、加藤と山本の率いるコスモタイガー隊とともに出撃した。敵戦闘機隊との激しい空中戦が繰り広げられ、コスモタイガーは次々と撃墜されていく。 加藤と山本は、古代機を守るために必死で戦闘を続けていた。その時、古代機が都市帝国のガトリング砲の火線上に重なった。それに気づいた山本が古代機との間に割って入る。ビームが山本機の翼に当たり、たちまち翼が炎を吹き出した。 「山本!消火して帰還しろっ!」 古代が叫ぶ。山本は炎上した翼を緊急消火装置で消火し、敬礼するとヤマトの格納庫に向かってターンした。 緑は隊員服にヘルメットと手袋をつけた簡易装備で転送装置を背中に背負い、スキャナ情報の読み取り端末を腰につけ、ガス弾の大型弾頭をつけたバズーカ砲を持って格納庫をめざした。 端末には真田と古代と思われる青と赤の光点が重なって映し出されている。光点は都市帝国のドーム内を上昇していくところだった。緑の隊員服は青木の血で真っ赤に染まっている。格納庫にたどりつくと、血まみれの緑の姿を見て駆け寄ってくる人影があった。…それは根岸だった。根岸は自機が被弾したため、修理のためにいったん帰還していたのである。 「緑!どうしたんだ、その怪我は!」 緑は大型艦艇用格納庫に降りるラッタルに手をかけた。残骸回収用艦艇は大型機格納庫にある。 次元断層バリアの内側に入ってから転送するためには、ある程度自分の周囲に空間が必要だった。コスモタイガーでは転送の際に機体まで転送してしまう。 緑が答えずに降りていったため、根岸は一緒に大型機格納庫まで降りてきた。緑は回収艇に乗り込み、発進用のコンベヤに艇を載せてからようやく答えた。 「これは青木さんの血です。私をかばって亡くなりました。…今から要塞の技師長にこの装置をお届けに行きます」 「こんな機体でどうやってあの激戦地に行くというんだ!」 「あのドームの中にさえ入れば、小ワープで私だけ装置と一緒に要塞の奥まで行けるんです。でも、コスモタイガーでは狭すぎて、機体の一部も一緒にワープしてしまいます。根岸さん、どうか降りてください」 回収艇はコンベヤで発進口に送られていく。 手元の端末では、真田と古代を示す光点がバラバラと動き始めていた。…二人はコスモタイガーを降りて要塞内部に侵入したらしい。 緑は突然顔を上げて、唇をひきむすんだ。その途端、根岸の頭の中に、はっきりと緑の声が聞こえた。それはまるで耳元でスピーカーを鳴らしたように大きく、聞き間違うことがないほど明瞭な声だった。 (コスモタイガーのみなさん、こちらは技術班開発部です。ダッシュボード右横の赤いレバーでガス弾が発射できます。要塞内部の敵を無力化して機体を守るために、要塞奥に向けて発射してください。それから、今後は絶対にヘルメットを外さないでください。発射後二時間は効力が持続する、人体にも有毒な神経ガスです) 「何なんだ、これは?」 「テレパシー通信です。関係する方にだけ聞こえるはずです。…早く降りてください。もう発進します」 根岸はいきなり緑を押しのけて操縦席に座った。 「きみは途中でワープしないといけないんだろう。だったらおれが操縦する」 根岸はエンジンに点火し、機体を急発進させた。とても回収艇とは思えない敏捷な動きで敵の攻撃を避けながら、機体は都市帝国に迫る。 根岸は肩ごしに振り返り、爽やかに笑いながら言った。 「早く真田さんを助けに行け。後ろのカーゴルームからワープするんだろう。おれのことは心配するな。ちゃんとヤマトに戻ってみせるから」 緑は操縦席の後ろから根岸の肩に手をあてた。 「ありがとう、根岸さん。…どうか死なないでください」 そう言うと、緑はカーゴルームに駆け込んだ。 |
ぴよ
2010年05月26日(水) 00時49分41秒 公開 ■この作品の著作権はぴよさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.2 Alice ■2010-06-16 16:30 ID:lmgw82KT0Zk | |||||
根岸さん、…どうか本当に死なないでください。 転送装置にスキャナ情報の読み取り端末、おまけにバズーカまで持って、そんな細い体でよく動けるなぁ…緑ったら。隠れマッチョなのかも。 山本様が無事に還ってきて嬉しいです。 |
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No.1 メカニック ■2010-05-26 15:03 ID:dPqLtHYdQoc | |||||
山本くんが助かってよかった…。炎上激突ではまた涙が出てしまいます。 次回はいよいよあのヤマトシリ−ズ屈指の名場面が…。ハンカチを大量に用意して待ってます。 |
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